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猫日記

ほら、だから猫に文章を描かせるとこうなるんだ

京都小旅行の記録 3日目 京大

リベラルアーッ! 旅行

京都大学

Киото университеті

 受験産業的に東京大学と比較されやすそうな京都大学ですが、中央に対する反体制っぷりが私を惹きつけてやみません

    私は東京にいながら京都学派にのめり込み、かなり挑発的な卒業論文をしたためたわけですが、都内にありながら評価(www)して下さった教授陣には、心底感謝申し上げております。むしろ評価云々の前に、中央の検閲に引っかからずに済んだのは幸いでしたが、同時期に非常にお世話になった教授が流刑にアーーーーーッ!!
 
ついに、京都大学に来ました。時計台の意匠がかわいい!チャリ率高い!
 

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    さて、私が特に注目していたのはストライキ*1ではなく「精神医学における京都学派」です。100年という長いようで短い歴史のなかで、著名な学者や医療関係者を輩出しています。

 たとえば、都内で木村敏氏というと、少し哲学に詳しい方々なら、「ああ…」「見ろ、研究棟がまるで病棟のようだ」「目が…!」などと発話し瞳孔が開いてしまいます。そのため、せっかく小声で「ええと、(母音は発音しないようにして)kmr…ビン…現象学…」のようにゴニョゴニョ発音しているのに、横から後輩が良く通る声で「音楽界隈でも有名なあのキムラ=ビン・ラディン」と明瞭に発音した際、周囲は滅びの呪文を唱えられたかのようになりました。

 

バルス!!!

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 しかし、既にバルス(単位:bs バルス毎秒)離れの進むこの現代に、京都学派が残っているのでしょうか。過去の遺産となっていることも十二分に考えられます。「図書館には飛行石がなければ入れまい」とぶらぶら売店に入ったところ、秘密の書籍*2を見つけてしまい、読める…読めるぞ……!と言いながら衝動買いしました。
 
 売店の方は、とても感じの良い学芸員のような雰囲気の方で、やっと怪しげな書籍の在庫が処分できたためか「あら、カメラマンですか」とはんなりと話しかけてくれました。やはり、ここは京都です。
 今の私には「(私の名は…リュシータ…。リュシータ・トエル…)あら、お姉さんは女優さんみたいよ!それにあたし、山育ちで眼はいいの!…電話ってこれかしら?」としか、申し上げることができませんでした。
 
 …先述の書籍の冒頭において、京都大学の「独自の学風」について描写された箇所を、下記に引用させていただきます。
京都大学は元来、医学部にかぎらず他の文系、理系の各学部についても一般にいえることとして、中央の「オーソドックス」な学問思潮になびかず、「反体制的」ともいえる独自の学風を育てることを特徴としてきた。精神科教室もその例に漏れない。……京大の精神科教室は長らくのあいだ、東京を中心とする諸大学には見られない際立ったオリジナリティを保ち続けてきた。……*3*4
 言ってみりゃ唯脳論な古典的精神医学(精神疾患=脳の器質的病変によるもの)に、まるで対抗するようなかたちで、「哲学的精神病理学」という名のもと「現象学」とか「実在論」などの哲学的観点から精神医学に光をあてる……。そこには、反・精神医学ともいえる気骨さえ感じられるのでした(あくまで個人的な感想です)。

スーパーアウフヘーベン(飛行石の揚力)

 精神医学を専攻したといってもひととおりの医学的知識は学んでいるはずで、さらに二度の世界大戦をくぐり抜けてきているわけですから、戦場に駆り出され治療にあたったり渡航して積極的に患者の症例研究に携わった医師も多かったことでしょう。
  東洋も西洋も、文科も理科も、臨床も研究も入り乱れる甚だしくカオスな現場で、京都学派の人々は、精神疾患も“西洋の医学”的にメスで切りきざんですっかり分解……ということは、しませんでした。
 それどころか、輸入してきたものと日本にあったものを一旦捉え直し、日本にはなかったいわゆる「(西洋)哲学」や、日本になじみ深い「禅」をはじめとする東洋思想の肩を借りるかたちで、脳の気質的病変にも臨床遺伝学にも内分泌系にも閉じない「新しい、第三の精神病理」とでも言えるような概念を生み出したのでした。
 
 まさに“神やホトケ”に近づかんとするような綜合的な観点でもって(これをどのように形容するのが良いのか非常に難しいのですが…)、ドナルド・キーン氏の文脈でいう「ニホン」らしく……日本に精神医学が受け容れられていった、ようであります。
 その100年というひとつの過程が、京都学派の著名な医師たちによってありありと(兵士の遺体を縫合して母国に送還するアルバイト、とかそういう話までも含め)描かれ、それらが編纂されついに書籍となったのでした。私はこの歴史を大切に持ち続けたいあくまで個人的な感想です!)。
 
 時間配分を間違えたため、折田先生像を見られませんでした…変身して出直してきます…

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折田先生「馬鹿につけるクスリはないですね」 
 
☆つづく☆ 

*1:なお、敷地内には教授陣による賃上げ要求の旗がいたるところに掲げてあります

*2:京大にも在庫が一冊しかないじゃないか!誰だこんなの買うのは

*3:木村敏(2003)「京大精神科百周年を迎えて」,『精神医学京都学派の100年』京都大学医学部精神医学教室編,p1,ナカニシヤ出版

*4:ナカニシヤ出版は、その昔丸善から独立して京都大の正門前に開業した本屋(主に学生用テキストを扱っていた)が前身だそうです。知らなかった